訃報/幸せ
祖父が亡くなった。
昨年の秋より体調を崩しており家のベッドで寝たきり状態の祖父。
亡くなるまでの約1年間、自宅にて介護を受けていた祖父。
実子である叔母家族と同居し、近くに住む母と叔母に手厚く介護をされていた祖父。
病院のベッドでみた祖父の亡骸は、
小枝のような手足に骨の浮き出た顔でまるで全ての無駄をそぎ落とされた彫刻のようだった。
そんな祖父は、幸せに逝けたと思う。
しかし、メインで面倒をみていた叔母は大変だったようだ。
というのも、祖父は体は衰弱してはいたが耳はよく、思考もしっかりしていたためいろいろと注文が多かったからだ。
少しでも体を動かすと「痛い。骨折する。」
少しでも(祖父にとって)固いものを食べさせようとすると「殺す気か。」
加えて、プライドも高いようなので
床ずれの介護やおむつの交換などは、実子(叔母・母)のみにしか頼まなかった。
そんな祖父が、介護施設に入るなどという選択肢をもっているはずなどなく。
叔母は、元来几帳面な性格で責任感も強いため毎日献身的に介護をしていた。
薬剤師の仕事も辞め、私生活をすべて祖父に捧げているといっても過言ではなかった。
このまま、共倒れになるのではないかと思った。
叔父・従兄弟は本気で心配していたようだ。
一方で我が母は、同居していないのもあるが適度に力を抜いて介護をしていたようだ。
がさつで豪快な人のため、祖父を動かすときに言われる罵詈雑言も一向に意に介さずむしろ言い返すくらいの勢いで対応していた。
祖父もそんな母に対して小言を言っていたようだが
それでもなぜか楽しそうだった。
祖父が亡くなって、葬式も終わり
母は悲しんではいるがいつも通り冗談を飛ばしている。
少しずつ、みんなのもとに
いつも通りの「日常」が戻ってきた。
祖父の死を受けて
私も自分が年老いてから死ぬ際のイメージをしてみた。
だが、祖父と同じような道をたどれるかといったら疑問が残る。
現在20代半ば。
これから結婚をし、子供をもうける。
子育てをし、子供が結婚し孫をもうける。
晩年は子や孫に囲まれる。
んー、なかなか難しそうだ。
そもそも、そのころには介護する人なんているのだろうか。。
現在、フィリピンやベトナムなどから介護人材を呼び込んでいるが
低賃金で人種差別丸出しの国に多くの人がきてくれないだろう。
むしろ私が年寄りのころには
星新一の世界のようなロボット全盛期の時代がきているのではないだろうか。